2014 June

Paris

1900年のパリ万博の会場として建設されたグランパレ。45mの高さに 13500平米という巨大空間。2007年より始まった 「MONUMENTA」は文化 省と通産省がアーティストを選んで、その大空間をたった一人のアーティストが インスタレーションするというもの。ア ンゼルム・キーファー、リチャード・ セラ、クリスチャン・ボルタンスキー、アーニッシュ・カプーア、ダニエル・ ビュランと続き、今年はロシア出身 のアーティスト、イリヤ&エミリア・カバ コフ。(Ilya & Emilia Kabacov) 数年前にヴェネチアのクィリーニ・スタンパ リア財団での展覧会が印象的だったので楽しみにしていた。
 
 
 
 
 
 
 
「CITE ETRANGE」、不思議な都市とでも訳すのだろうか?真っ白い迷路の様な 大空間に音楽が鳴り響き、彷徨って行くと「宇宙のエネル ギーの扉」に辿り着 く。「暗いチャペル」と「白いチャペル」があり、目を閉じると天使や教会のモ チーフが浮かぶ・・・。お天気があまりにも良く、 温室さながらの暑さと真っ 白な壁の照り返しで何だかフラフラになる。昔訪れたギリシャの灼熱のミコノス 島を呆然と思い出す。

 

Paris

   
真っ白で巨大なMONUMENTA を観た後で何だか目が回る。ヨロヨロと同じくグランパレの別のホールで「Bill VIOLA」の展覧会を見る。 快晴の空と建物の照り返し、美術館の前庭でピクニックする人 達も発見!目が慣れるまでは真っ暗すぎてビデオ・アートどころか 歩くのもままならない。
 
 
 
 
1977年からの大回顧展という事で会場構成も面白い。「私は誰?私はどこに 居る?私はどこへ行く?」という、アーティスト自身の問い、時間の存 在を彫 刻するというコンセプト、見る側もさまざまに考えさせられる。20年以上さま ざまな場所で作品を見る機会があったけれど、ずいぶん前にロン ドンの(郊外 だったかもしれない・・・)教会で見た作品は強烈なインパクトがあった。 真っ暗な中滝の音が響き渡り、何と言うこともないタダの階段もなんだかインス タレーションのよう・・・。

 

Paris

 
 
 
 
「Les Architectes ouverent leurs portes 」は今年初めてのイベントで、パリ 中、いえフランス中(?)の建築家がアトリエを開放して、建築家という仕事を 理解してもらおうと言う試み。友人のボザー ル(芸大)の教授D氏のアトリエ はご自宅のアパルトマンの向い。「忙しいとこの建物から出ない!」という理想 的な環境。デッサンや模型が所狭しと 並ぶ。26年前に出会った頃の話など建 築とは全く関係のない話で盛り上がる。アート・ディレクターの友人が冷えた シャンパンを持ってやって来る。 もう午後も遅いし・・・?2人とも仕事で何 度も日本へ行って居るので東京の話もパリの話も時差がない。土曜日のまだ明る い午後、シャンパンを飲み ながらよもや話、延々に話題は尽きない・・・。長 い友情に感謝する素敵な時間。欲しかった「建築家アドルフ・ロース」の本も見せて頂く。デッサンももちろん拝見しました!

 

Paris

 
 
 
 

Theatre de la Ville パリ市立劇場でピナ・バウシュの「Palermo Parelmo」 を観る。1年前から予約するシステムのこの劇場、当然来られなくなる人も居るわけで、私のようにパリに居るかどうかすらわからない人は 「cherche une place 」つまり「1席探しています」の紙を持って劇場の前に立つ。ほぼ 100%の成功率でお席を譲って頂けるのも、逆にこのシステムのおかげかも・・・。自由に 観たいものを観られるこの環境にいつも感謝する瞬間。譲っ て下さった方は私が隣に来るわけで「話が合いそう」とか、すり鉢状の劇場の狭 いお席なの で「小さいから圧迫感が無さそう」とか、日本の話をしたがる方も 多く、終わった後にお茶をご一緒する事もある。長年この方式で観ているので、 TV 局の方などは覚えていて下さったり。それにしてもフランス人は本当に日本が大好きなのだと思うのもこんな時。「あなたの何とも言えないユーモラス な佇まいは忘れませんよ」と常連のおば様に譲って頂いた時には、「佇まいが ユーモラス?」と自問自答した・・・。

1989年のこの作品。積み上げられていた壁が突然崩れ落ちる有名なオープニ ング。それを黒服のスタッフが整え直す中で始まる幾つもの寸劇。豊か な芸術 性を併せ持った、ユーモアに満ちた展開が続く。同じ登場人物やモチーフが全く 別のシーンで繰り返されたり、全く別の展開になったり・・・正 に人生そのも ののような気がする。 ピナ・バウシュの言う「タンツテアター」ダンスと演劇の融合(?)の意味が何 となく解る。その両者の垣根を取り払い、境界線を自由に行き来して開 拓し た、そのどちらでもない全く新しいジャンル・・・。「五感を圧する体験」と評 した方が居たけれど、正にそんな「体験」。終わった後に「人生っ ていろいろ だよね」と譲って下さった方と話す。

 

 

Paris

Palais de Tokyo パレ・ド・トウキョウで「Thomas Hirschhorn - Flamme Eternelle 」を見る。3時間に渡るピナ・バウシュを観た後でもまだ明るい6月 のパリ、正午から深夜まで開いているこの美術館は嬉しい。パリ在住のスイス人 アーティス トの「永遠の炎」または「永遠の情熱」?というタイトル通り、炎 を焚いた作品?の中で討論会が行われている。消防署の人も居て巨大な消火器も あち こちに・・・。「インスタレーションの中で何をしても良い」という雰囲 気で、一般の人が勉強していたり、ビデオを観ていたり。私は討論会を聞くで もなく、テープで覆われたソファで先ほどのピナ・バウシュの画像を整理したり してくつろぐ。
 
 
 
しかし・・・明日が最終日という事でスイスのTVが遠隔で撮影していたらし く、ディレクターらしき人が近寄って来て「あなたは日本人で す か?」と。 「作品は好きでしたか?」と聞くので「イエース」などとテキトーに 答えてい たら、アーティスト本人がやって来て一緒にTVに収まるこ とに!討 論会が終 わって質問しようとメモを持ったジャーナリストが列になって居るのが きっと 嫌になってしまったのかも・・・?自分のカメラや私の カメラでバシャ バシャ 記念撮影など。後から見せてもらった画像を見ると、テープ貼りのソファ での びのび寛いでいる私!パリはいろいろな事 が起こる。

 

Paris

 
 
 
パレ・ド・トウキョウに来ると本当にいろいろな展覧会を同時にやっているの と、空間の巨大さから来るインスタレーションのスケールの大きさに圧倒 され 何時間でも居られそう。暗い狭いところが苦手な私には少し難しい時があるビデ オ・アートも、こうも大きな空間に放り出されると何となく「安息 の場」のよ うに感じる。こんな見方では美術評論家の方には叱られそうだけれど・・・。自 由な見方もあると言う事で許して頂きたい。 映像から少し離れたところにあるスピーカーから音声が流れる。その時差という か、映像に音声がぴったり合っている事が普通だと思っている事に逆に 気付 く・・・。何ともシュールな体験。

 

Paris

 
 
 
あまりにも大きな空間でたくさんの物を見ると、頭の中が整理されなくて少し疲 れる。私には「小さなデザインワーク」が合っているというか、限界と いう か・・・。大きな物や重たいもの、大きな空間というのがあまり得意ではないの は、「いつも身軽で自由で居たい」という私の根底にある気持ちか ら来るの か?静かに暮れて行くパリの夜、さまざまなアーティストが出展しているこの展 覧会。現代美術のアーティストとヒトコトで言ってもいろいろ な人生があるの だなぁ・・・。そんな事を考えるのもこういう場所、こういう展覧会の意味かも 知れない。

 

Paris

 
 
expo index サンジェルマン・デ・プレのメトロの駅構内はいつも何かの展示をしている。あ まりにもたくさんの、そして世界中の文化人の「ゆかりの地」であるか らマテ リアルには事欠かない。マニュスクリ(manusucripts )とは「自筆」のこと、 ヘミング・ウェイの自筆の手紙をはじめ文学者の自筆原稿なども展示されてい る。ついつい読み込んでしまうとなかなかメトロに乗れな い・・・。 page top

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